アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは痒みのある湿疹(=皮膚炎)が、悪化と軽快を繰り返す慢性疾患です。
皮膚のバリア機能低下と、食物や環境中のアレルゲンに対するアレルギーが病態の形成に重要です。乾燥や汗、ストレスなど種々の悪化因子が関与しています。
アトピー性皮膚炎では皮膚炎を沈静化しないと 悪循環による慢性化・難治化がおこります。
当院では日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドラインに基づき、患者様一人一人の状態に合わせた標準治療を行っております。
アトピー性皮膚炎の経過
一般に慢性に経過しますが、適切な治療によって症状がコントロールされた状態が長く維持されると、寛解(薬物療法を必要としない状態≒治っていくこと)も期待される疾患です。

治療薬
1.ステロイド外用剤
優れた抗炎症作用を持ち、アトピー性皮膚炎の治療において最も重要な薬剤です。
長期に用いると皮膚萎縮などの副作用が懸念されますが、適切な強さのものを適切な部位に適切な期間塗布して炎症を十分に軽快させた後に、安全に維持する治療法が一般に普及しています。
2.タクロリムス軟膏は中等度のステロイド外用薬に匹敵する薬剤で、2歳以上のアトピー性皮膚炎患者に承認されています。
塗り始めの時期に刺激感がみられることがあります。
3.抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の内服
皮膚炎に伴うかゆみの症状を抑えます。
4.紫外線療法(ナローバンドUVB)
5.保湿剤によるスキンケアは皮膚バリア機能を補完して、刺激やアレルゲンの侵入を防ぎ、アトピー性皮膚炎の発症や悪化を予防すします。
6.コレクチム軟膏は20年ぶりにアトピー性皮膚炎外用治療薬として新しく発売されました。
外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬というお薬です。
アトピー性皮膚炎の病態には、サイトカインと呼ばれる物質が関与しています。サイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31など)が、免疫細胞や神経にある受容体という受け皿に付くと、JAKなどのシグナル経路が活性化され、炎症やかゆみを引き起こします。
コレクチム軟膏は、皮膚から浸透し、細胞内のJAK経路から伝達される炎症を引き起こすシグナルをブロックすることで、皮膚の炎症やかゆみを抑え、アトピー性皮膚炎を改善します。
刺激の少ない薬剤です。
7.ブイタマークリーム1%は2024年に登場したAhR調整薬です。アトピー性皮膚炎と尋常性乾癬に適応があります。アトピー性皮膚炎では、通常、成人および12歳以上の小児には、1日1回適量を患部に塗布します。ステロイド外用剤で起こりうる外用部位の皮膚萎縮や毛細血管拡張などの副作用の心配がブイタマークリームでは少なく、長期使用についても安全性が高いことからこれから期待される薬剤です。
8.デュピクセントは、インターロイキン 4(IL-4)とインターロイキン 13(IL-13)と呼ばれる 2 つのタンパク質の過剰な働きを特異的に阻害するヒトモノクローナル抗体です。IL-4 と IL-13 は、アトピー性皮膚炎やその他のアレルギー性またはアトピー性疾患の慢性炎症において、中心的な役割を果たしていると考えられています。2週間毎の皮下注射を行います。
今までの治療法で十分な効果が得られていない生後6か月からのアトピー性皮膚炎の方が対象となります。
ミチーガは、アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみの原因となる物質のうち、IL-31(インターロイキン31)のはたらきをブロックすることによってアトピー性皮膚炎のかゆみをおさえる薬です。
従来のアトピー性皮膚炎の治療薬である炎症をおさえる塗り薬及び抗アレルギー剤を使用して、治療を一定期間行っても、かゆみが改善しない、6歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さんが使用できます。
ミチーガは、通常4週(1ヵ月)ごとに注射します。
イブグリースは抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤で、アトピー性皮膚炎の病態形成において中心的な役割を果たすIL-13に結合し、IL-13受容体複合体を介してシグナル伝達を阻害する生物学的製剤です。
成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、初回及び2週後に1回500mg、4週以降、1回250mgを2週間隔で皮下投与します。イブグリースは消失半減期が約21日と長い事から皮膚の状態に応じて、4週以降、1回250mgを4週間隔に投与間隔を延長することができます。

9.オルミエント・リンヴォック・サイバインコは新しいアトピー性皮膚炎の内服治療薬として登場しました。
『JAK/STATシグナル伝達経路』を阻害することで、かゆみを抑え湿疹の原因となる炎症、皮膚バリアの低下を抑えてくれる働きがあります。
※JAK/STATシグナル伝達経路はアトピー性皮膚炎の病態形成に関与しており、リンヴォックではJAK1を強く阻害します。難治性、重症のアトピー性皮膚炎への適応となります。(保険適応あり)

アトピー性皮膚炎の診断治療アルゴリズム
「アトピー性皮膚炎の診療ガイドライン2018」等から引用
ナローバンドUVB療法
当院では、最新の紫外線照射器によるアトピー性皮膚炎や乾癬、白斑、掌蹠膿疱症などの治療を行っております。
当院のナローバンドUVB照射器は全身用なので、短時間で効率よく治療を行うことができます。
ナローバンドUVB療法の対象疾患
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アトピー性皮膚炎
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乾癬
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類乾癬
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掌蹠膿疱症
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菌状息肉腫(症)
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悪性リンパ腫
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慢性苔癬状粃糠疹
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尋常性白斑 など
ナローバンドUVB療法とは
太陽光に含まれる紫外線には、その波長に応じてUVA、UVB、UVCがあります。
その中で、皮膚科疾患の治療には、UVAとUVBが用いられています。UVAによる治療は、ソラレン(Psoralen)という光に敏感になる薬を使用して行うPUVA療法です。効果がある治療ですが、前処置があることや外来通院での治療が難しい(完全遮光が必要)ことが難点でした。
UVB療法は、PUVA療法の際の前処置の薬は必要なく外来通院でも治療が可能です。近年、UVBの波長の中で、特に308nm~311nmの波長の光が疾患治療に有効であることがわかり、これがナローバンドUVB療法と呼ばれている治療です。
当院のナローバンドUVB療法の特長
全身に対して十分な紫外線を均ーかつ短時間で照射することができます。具体的には週1~2回程度にて紫外線照射器の中に入り、数十秒ほどの紫外線照射で十分に皮膚患部に照射可能です。
ナローバンドUVB療法の期待できる効果
ナローバンドUVB療法により、次の効果が期待できます。
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かゆみの解消
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軟膏など外用薬の低減
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再発の予防 など
ナローバンドUVB療法はあくまで補助的な治療であり、まずは内服や外用薬による治療を継続していただき、ナローバンドUVB療法は補助的な位置付けで受診された方がより有効といえます。
ナローバンドUVB療法ができない方
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敏感肌の方
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日光過敏症の方
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皮膚悪性腫瘍や日光角化症のある方
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免疫抑制剤を内服中の方
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妊娠中、授乳中の方